特別養子縁組について 養子縁組あっせん事業

特別養子縁組制度とは、さまざまな事情により生みの親のもとでは暮らせない子どもを、
自分の子どもとして迎え入れる制度です。
法的な親子関係を結ぶため、子どもが生涯にわたり安定した家庭を得ることができます。
これまで養子となる子の年齢は「原則6歳未満」でしたが、2019年の法改正で「原則15歳未満」に引き上げられました。また、成立までの手続きが見直され、養親を希望する人の負担が減りました。 


院長からのメッセージ

私は特別養子縁組あっせん事業者です。2018年法律が変わり、それまでの届け出制から許可制となりました。

 許可を得るのに、それは膨大な書類を提出しなければなりませんでした。
中でも、12,000字に及ぶ「あっせん実施方法、体制などに関する業務方法書」など作成が大変でした。
 それらをクリアして、広島市長(背後に厚労省がいます)の許可を得ました。
同じような民間あっせん事業者が今国内に22あります。

私が初めて養子縁組のお世話をしたのは、もう36年前になります。
当時は、まだ特別養子縁組の制度はありませんでした。
 若い受診者が沢山来られる中で、中には悩んでいる内に中絶の時期を失してしまい、産むしかなく、育てることもできないというケースがあり、一方で挙児を望んでもどうしても恵まれない不妊の夫妻で、養子を望まれる方にも出会うようになり、その橋渡しをすることにしたのです。

 今は三か月に一人ずつのペースでお世話をしています。
ただ、以前は広島県内で済んでいたのが、厚労省のあっせん事業者一覧を見てからでしょう、県外から広く養親を望まれる方が来られるようになりました。
 その場合、一度は患者さんとして当院に来院して頂いています。
 そこでいろいろとお話をして、問題がなければ、原則順番で登録します。
 順番が近くなると、家庭訪問に行きます。遠方の場合は、泊りがけになります。訪問したお宅で研修をします。
 手作りの教科書とプロジェクターももって行き、お家の壁にこれも手作りの説明資料を写して、半日から一日かけて研修をします。原則生まれてすぐから赤ちゃんを引き取って育てていただきます。

赤ちゃんを手放すことは、あくまでも本人の意思で、周りの力で決めてはいけません。
それから、相手の男性と繋がっている時にもあっせんはしません。
今は無理でも、将来二人で育てることができるようになるかもしれないからです。

迷っている場合は、いつまででも待ちます。
あくまでも本人が、「赤ちゃんのために」手放すことを決心した場合のみです。

赤ちゃんが産まれそうになると、順番の方に連絡をし、事情をお話し、育てて頂けるか考えて頂きます。
皆さん、大喜びで引き受けていただけます。名前も考えて頂きます。

 生まれると、私は実母と赤ちゃんに会いに行き、もう一度意思の確認をします。
つらいお産をした上で、やはり自分で育てるとなった場合、養親の候補の方には、次を待って頂きます。
 手放す意思が変わらない場合には、退院と入れ替わりで養親に教育入院をしていただき、
子育ての練習をして家に連れて帰っていただきます。
 出生届は私と実母と一緒に提出に行きます。
その際、本籍や住民票を定めるのに、慣れない役場の方に丁寧な説明が必要なこともあります。

戸籍は、実母と児の二人のものになります。(これは養子縁組が成立した後で、児は戸籍から消すことが出来ます)
住民票は、養親の家に同居人として入り、健康保険は一人の国民健康保険となります。

 それから家庭裁判所に特別養子縁組の申立書を提出します。これは、養親と私と一緒に作ります。
 同時に私は実母のこと、養親のことを詳しく書いた上申書を作成し、提出します。
それから半年以上、地域の児相と家庭裁判所の調査官の養親の子育ての観察があります。

 そうして、半年以上経って家裁の審判が出て、やっと特別養子縁組が成立します。
成立すると、戸籍には「養子・養女」ではなく、「長男・長女」として記録され、実母とは断絶します。

そこから先なのですが、私と養親、私と実母とはLINE(ライン)アプリで繋がります。
子育ての様々な悩みはラインで、時にはライン電話で話し合います。
写真も動画も沢山送ってきます。実母は、悩んで手放した子のことがそう簡単には忘れられません。
実母には、要求があれば、養親から送っていただいた写真を転送します。
とても幸せに育ててもらっているということが分かって安心し、そのうち、段々とフェイドアウトしていきます。
やがて、新しい出会いがあり、今度は自分で育てられる出産をし、カップルで子育てをする内に、傷も癒えていきます。

 それから、今は出自を隠す子育てでなく、早くから養子であることを告知して育てる様になっています。
それを研修でもっとも力を入れています。
出自を隠して育て、思春期に他人から知らされるというのが、一番よくないことなのです。

 私は、これらはすべてボランティアでしていて、お金は戴きません。

 赤ちゃんの命でお金が動くのがいやだからです。
ですから、遠方の場合など、家庭訪問の交通費やホテル代もバカになりません。
他のあっせん事業者では、高額のお金を養親から徴収する所もあり、また、厚労省から多額の助成金を得ている所もあって、情けない思いをしています。
 今、国全体では年に700人余りの特別養子縁組が成立していますが、厚労省は、保護者に育ててもらえない児は、
原則施設ではなく、里親や養子縁組でという方針で、年間1000件を目指すとしています。

 私のところでは、このような出産をして赤ちゃんを手放していくのは、主に中・高校生ですが、最低年齢は、
11才です。相手の男性は圧倒的に成人男性です。
 このような女性は、問題のあるツッパリさんと思われているようですが、そうではなく、いわゆるいい子ほど、
身近な人に相談できず、どうしようと悩んでいる内に、どんどんと追い込まれて行くのです。
 性教育の不足、とくに男性への教育も今、全くなされていないことが何よりの問題なのですが、一人で産んで、
児が亡くなって、女性だけが罪に問われるという状況は何とかしなければという思いでいます。

 ただ、私のこのようなお世話は、いつまで続けることができるか、それが今一番の悩みです。
「河野美代子ブログ、中学生の妊娠、手紙」と検索して頂ければ、
私と14才で出産し手放した女性との往復書簡を許可を得て出しています。
読んでいただけると幸いです。

(産婦人科医・河野美代子) 

中学生の妊娠 手紙(1)こちらからご覧いただけますので、順を追ってご覧ください。
※ 記事は手紙(1)~(6)まであります。

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